小田原箱根商工会議所は、小田原・箱根の企業を応援しています。


2023年 1月号

年頭あいさつ

 謹んで新春のお慶びを申し上げます。
 
今年の漢字という例に倣って、2023年は「初心」としてみました。
 
先日、ある能楽師の方に伺った話の受け売りではありますが…
「初心 忘れるべからず」とは能を大成した観阿弥、世阿弥父子の言葉です。一般的には、「それを始めたときの初々しい気持ちを忘れてはならない」という意味で使われていますが、その本意は違ったのだそうです。
「初」は、衣編に刀と書きます。衣服を作る手始めの作業で、まっさらな衣(布地)を刀(ハサミ)でばっさりと裁断する様子を現しています。世阿弥は「折あるごとに古い自己を裁ち切り、新たな自己として生まれ変わられなければならないということを忘れるな」と言っているのだそうです。
 
経験を積み、「形」を覚え、パターンに慣れてしまうと応用が効かなくなったり、視野が狭くなったり、惰性に流れてしまいがちです。そんな日常において、「初心」とは、様々な可能性を秘めていたかつての状態を思い出し、新たな可能性に踏み出すためのより柔軟で臨機応変なあり方を示していて、能が650年もの間、それぞれの時代の大変化を生き抜いてなお綿々と続いているのは、この意思によるイノベーションの連続の故だそうです。
 
私たちは今、時代の大変化の狭間、まさに教科書のない時代にいるように感じます。国内では加速化する人口の減少、少子化、高齢化といった社会構造の変化。地球規模で広がる気候変動、社会的な分断、不安定な国際情勢。デジタル化がもたらす社会インフラの転換。加えてWITHコロナ、POSTコロナの時代と。これまでの経験や知恵があまり役に立たないことを感じることが多くなりました。(私自身の歳のせいかも知れませんが)
 
過去の成功体験に執着するのではなく、柔軟な発想と思い切った行動が必要だと思うのです。まさに世阿弥の言う「初心 」です。今年は「初心 忘れるべからず」の精神でイノベーションを意識してまいりたいと思います。
 
皆さまにとって実り多き年になりますことと併せ、世界の平穏を念じつつ。
 
 
 

入会のご案内

意見・要望活動

意見・要望活動

ページの先頭へ