小田原箱根商工会議所は、小田原・箱根の企業を応援しています。


2024年  3月号

史上最高の株価

 新聞各紙の紙面には株価史上最高値、デフレ脱却、好調な企業業績などの文字が躍っています。株が高くなったことを以て、「景気がいい」、「経済が順調だ」と・・・。どこの国の話かと違和感を覚えます。
 
 釈迦に説法かとは思いますが、ここで論じられている株価とは、日経平均株価、つまり、日本経済新聞社が東京証券取引所のプライム市場に上場している銘柄の中の株価水準が高く売買が活発な銘柄や安定度の高い225の銘柄の平均値です。(正確に言うと、平均値に、みなし額面や株式分割や併合、銘柄の入れ替えで生じる株価変動などを考慮した修正を加えたものです。) 全体の一部に過ぎない、それも「値がさ株」と呼ばれる株価水準の高い銘柄の株価の影響が大きくなってしまうため、必ずしも東京証券市場全体、さらには、上場会社全体の動きを反映しているものではないことに留意することが必要です。
ましてや、この国の企業数の99%を占める私たちのような非上場の中小企業の株価は一切関係ありません。そもそも、日本政策金融公庫や国税庁によると、中小企業の6割~7割は赤字で、税金を納めていないのが実態です。
 
 今の株高は、円安を追い風に業績を伸ばしている一部の大企業の株を外国人投資家や一部の富裕層などが投機目的で買っていることの結果でありましょう。多くの専門家は、日銀の「異次元緩和」での国債や上場投資信託(ETF)の大量買いの影響も大きいことを指摘しています。一部の大企業だけを観たこの数字は経済の実態を反映したものではなく、「株価は金融の世界の話で、実態経済とは別もの」と言われるゆえんです。
 
 そして、その数字がこれまでの金融政策や経済政策を正当化する材料に使われていることが気になります。
 ゼロ金利(欧米との金利差)が引き起こす円安の影響で、私たち中小企業は、原材料やエネルギーコストの上昇に苦しみ、人件費を上げたくとも上げられず四苦八苦しているというのが現実です。もちろん、借金をしていますから金利は低い方がありがたいことは当たり前ですが、経営に対するインパクト(負担)は、金利の上下1%とその差が引き起こしているコスト高では桁が違います。
適正な金利を負担して、人件費を払い、利益を出し、税金を払うというまっとうな商売ができる環境を整備するのが、政府のまっとうな経済政策であり、日銀のまっとうな金融政策であると思いますし、その実行を期待します。
 中小企業のコストが上がるたびにパッチワークのようにその部分に対する支援を繰り返すだけの対処療法ではなく、企業が自らの根っこを強く太くできる環境づくりを期待したいものです。
その環境の中でどう行動するか、どう努力するかは、自分たちしだいです。まさに自己責任の世界です。この国の経済に責任を持つ為政者に対して、結果を保証しろとは言いません。ただ、頑張れる環境とチャンスを作って欲しいと切に願います。
 
 日銀の異次元緩和によって、世の中に出回るはずの全体のお金の量は増え続けています。お金がジャブジャブだと言われますが、私たち中小企業の現場では全くその実感はありません。お金は蒸発しません。どこかに滞留、渋滞して、あるいは、海外に流出して、必要なところに廻っていないということでしょう。地域で廻るお金を増やし、そのスピードを上げることが重要だと申し上げているゆえんです。
 
 「経済」とはそもそも「経世済民」。「世を治め、民を救う」ための仕組み・道具であるはずです。金とモノとの交換とその周辺の活動と投機のようなマネーゲームだけを捉えた狭い意味の経済がはびこっています。その結果、貧富の差が拡大し、貧困が広がり、それが社会の分断を招いています。経済とは決して単なる金儲けの話ではないはずです。
私たち地域の中小企業は、地域の暮らしの血流である経済を下支えする存在です。日々の経済活動になりわいとして携わっている者だからこそ、本当の経済の役割を知り、誇りを持って、経済活動の中での自分の役割を果たしていくべきだと思います。商工会議所はその応援団たらんと改めて思うしだいです。

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