2026年6月号
「観光をオール地元参画産業に」
日本商工会議所主催の観光関係のイベント「全国商工会議所観光振興大会」で北海道へ行ってきました。毎年、全国各地持ち回りで開催され、各地の商工会議所から役員を中心に2,000人規模の参加があります。当地、小田原、箱根では、観光協会/DMOが活発に活動をしていますので、当所では観光への取り組みは主体的というよりそれぞれに協力するというスタンスで進めていますが、多くの地域では商工会議所が中心となっているケースが多いです。ただ、いずれはこの大会を全国有数の観光地である当地でも誘致したいと思っています。
さて、北海道はその人口500万のうち札幌に200万(2位は旭川30万)という数字で分かるように何でも札幌へ一点集中してしまうことを鑑み、今回は札幌をメイン会場に旭川、釧路、登別の3都市にサテライト会場を設置し、式典は札幌会場から各都市へライブ配信し、講演や分科会はそれぞれの土地で独自のものをというユニークな形に挑戦しました。私は敢えて札幌を避けて、旭川に参加しました。
私が一泊二日のプログラムで学んだことは大きく2つです。
ひとつは、観光という産業の実態です。
2025年の日本人の国内旅行消費額は前年比6.4%増の26.8兆円。それにインバウンドの9.5兆円(24年度比16.4%)を加えると(2025年の年間訪日外客数は42,683,600人で前年比では15.8%増で過去最高)その消費額は合計36.3兆円に上ります。まさにわが国の基幹産業の一翼を担って
います。
さらにインバウンドについて、外貨を稼ぐという観点で、他製品別の輸出額と比べると何と自動車に次ぐ2位です。
ちなみにその中身は中国20,058億円(構成比21.2%)、台湾12,033億円(同12.7%)米国11,186億円(同11.8%)、韓国9,906億円(同10.5%)、香港5,614億円(同5.9%)の順で多く、これら上位5カ国・地域で全体の62.2%を占めます。
さらに、世界を見るとGDPの約10%、雇用の10%という超大型産業に成長しています。観光は主力産業の補完ではなく、主力産業として位置づけること、いや、すでに主力産業であることと認識して取り組むべきであるということです。
もうひとつは、観光の様変わりです。
観光を語る時に、大切なことは非日常体験を提供することだという言い方をよくしますが、それも疑ってみるべきだと思うのです。
観光がライフタイムイベントであった時代から時が流れ、日常的に観光に出かけることができる今の時代に人は何を求めるか? いわゆる名所旧跡という目的地を廻る物見遊山の旅、つまり歴史、文化、食、景観や自然を並べて目的地を単に巡らせるのではなく、その行程も含めて、その土地の歴史文化のストーリーを今の暮らしとのつながりで再編集し、その地域の価値の体験に変えることが重要でないかと。
提供すべきは非日常だけではなく、日常の延長線上にあるワンランク上の暮らし、いわば「異日常」ではないかと思うのです。そして、それは低価格にする必要はありません。価格で競うのではなく、突き詰めるべきは体験価値です。そう考えると、例えば、既存の商店街は地元のお客様が日常の買い物をする場所と自らを定義してきましたが、観光が異日常を求めるなら、充分に受け皿になりうるはずです。地元だけでなく、いわゆる観光客も自分のお客様だと思えば、打つ手は無限にありそうです。
さらには、従来当たり前と思っていた国内観光客とインバウンドを分ける考え方も見直すベきでしょう。インバウンドの利便を図る施策は国内のお客様にとってもいいことのはずですから。
さて、日商の観光委員会(私は副委員長を仰せつかっています)では、「全国商工会議所きらり輝く観光大賞」という顕彰事業を行っており、各地の商工会議所の優れた取り組みを観光振興大会で表彰をしています。今年の大賞は福井県大野市の大野商工会議所が選ばれました。派手でなく、規模も大きくない事例が選ばれたことも時代の変化を象徴していると思います。
■大賞
○大野商工会議所(福井県)
│大野型滞在循環モデル創出事業│
福井県大野市は、年間観光客数約214万人に対し宿泊率は約4%、1人あたりの観光消費額は約3千円にとどまっていた。そこで、滞在型の観光モデルを作るため、大野商工会議所が地域のハブとなり、体験事業者と旅行者をつなぐ仕組みを構築し、日常的な営みを価値化する「大野微びじゅう住」ブランドを立ち上げた。寺社での坐禅・写経、神職による講話、醤油蔵での木樽発酵体験など、地域に根差した本物の文化を体験プログラムとして提供している。
主なターゲットは台湾や欧米の富裕層で、モニターツアーでは1人あたり約15〜30万円と、従来の平均消費額を大幅に上回る高付加価値化を実現。収益は文化の継承に充てており、観光を通して、地域の文化資源を経済価値へ転換し、持続性の高い地域経済の循環を構築している点が高く評価された。また、受入人数を制御し、環境と調和する「静かな成長」を志向した点も特徴。(日商ホームページより)
この事例で見えるのは、地域全体が参加する産業の姿です。これまで観光は一部のいわゆる観光業者だけが潤い、地元住民や観光に関係ない(と思ってきた)企業にとっては、観光客はインバウンドも含めて、交通を渋滞、混雑させ、ごみを増やし、まちを騒がしくし、雰囲気を壊す・・・やっかい迷惑な存在となっていませんか?
観光の定義を見直し、より多くの地域にステークホルダーにとって価値を生み出す仕掛け、オール地元参画産業だと再定義することで、それぞれが関わり、利益を上げることややり方が見えてくるのではないか?
それは、今、全国各地で失われつつある伝統文化や自然を守り維持し改善し伝承していくことにつながる。観光とは地域資源を摩耗するのではなく、地域資源の価値を高めていくこと。そのキーは、やはり地域で暮らす私たち「人」であり、私たちと来街者とのコミュニケーション。そして、来街者には地域のルールとマナーをしっかり伝えて、それを守っていただくことも大切です。
持続可能な観光と持続可能な地域の一挙両得はありえるのではないか? そんなことを考えた旭川での二日間でした。


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