小田原箱根商工会議所は、小田原・箱根の企業を応援しています。


2021年 6月号

今、この国が総力を挙げてやるべきことは?

 先日、定例の記者会見の席で記者の方々からコロナに関して、地元企業への影響や観光集客の状況などへの質問と併せて、オリパラの開催の是非について意見を求められたので、もちろん当所で機関決定をした公式の見解ではなく、あくまで私見ですがと、前置きをした上で、「やれないし、やるべきでないと思います」と敢えて申し上げました。
 開催中の感染対策は膨大な人と金を投じればそれなりに講じることはできるかも知れません。その安全性を危惧する声も多く聞きます。賛成か反対かという二律背反の議論ではなく、私は地域の中小企業の立場から少し異なる視点を持っています。
 私たち地域の経済を下支えする役割を担っている私たち中小企業がまともな企業活動ができない状況に面している今、何より優先されるべきことは、経済の大前提である普通の当たり前の暮らしを取り戻すことだと考えます。
 そのために、私は、今はオリパラに注がれている資金と人材を集中的にコロナ対策に振り向けるべきと思います。特に、ワクチン接種の促進と医療体制の整備の二つの面に。
 私事で恐縮ですが、私はこう見えても、体育会系男子なので、(最近は歳のせいで体が思うように動かないジレンマと闘いながらですが)スポーツはやるのも、(先日のゴルフのマスターズの松山プロをTVの前で一晩中ずっと応援するほど)観るのも大好きですし、苦しい練習に耐え、いろいろなことを犠牲にしてオリパラに賭けるアスリーツの方々を尊敬すれども軽んじるつもりは全くありません。それでも…です。

 そもそもオリパラは何のためにやるのでしたっけ? あれほど、招致の時には多く語られていた「レガシー」という言葉を最近はとんと聞かなくなりました。政府や関係者が議論しているのは「どうしたらやれるか」だけで「なぜ、やるのか」「何を残すのか」を語る人はいなくなりました。
 さらには、海外からの人は来ない、無観客、選手との交流もできない(小田原はエリトリア、ミャンマー、ブータン、モリデイブ、オーストラリアからの選手を受け入れるホストタウンですが、多分、何もできないでしょう)というオリパラは意味があるのでしょうか?
 その精神は何かに立ち戻って考えるべきだと思います。オリンピズムやオリンピックムーブメントとは何か?をオリンピック憲章を今一度読み返してみれば、「オリパラを成功させ、コロナに勝った証に」など全く的外れであることが分かります。
 オリンピック憲章:https://www.joc.or.jp/olympism/charter/pdf/olympiccharter2020.pdf
 普通の当たり前の暮らしを取り戻すために集中的にやるべきことは2つだと思うのです。
 まずはワクチン接種の促進。法律の建付けを変えてでも、国と市町村が一体になって強力に進めていただきたいと思います。
 そして、医療体制の整備です。これからも感染の縮小と拡大を繰り返しながら収束へと向かうであろうという前提で、とにかく、感染が拡大しても大丈夫な体制は執れないのでしょうか? 加えて、コロナ患者だけでなく、コロナ対応でガンなどの通常の重症患者が手術を受けられない状況は何とかすべきでしょう。救える命が救えないという何とも悲しい状況が起こり始めています。最近、ある民間のクリニック(宇都宮)が空き地にプレハブで患者10名収容・10棟の個室のコロナ専門病棟(軽症から中等症)を作りました。大阪府はプレハブ30床(重症)を、日本財団がお台場にプレハブとアリーナで250床(無症状から軽症)を作りました。国が全面的に音頭を取り、県や市町村と協力して同じような施設を各地に同時多発的に整備することはできないのでしょうか? この一年、少なくとも2回目の緊急事態宣言が発令されていた間の時間の経過が悔やまれます。医師会との調整が難しいのなら、まずは公立でやればいい。確かに医療の世界は難しい業界と聞いていますが、100年に一度の緊急事態です。トップリーダーの発想と決断しだいだと思います。その任の重さは比べ物にはならないかも知れませんが、一経営者として自戒の念を持ってそう思います。
 一日も早く普通の暮らしを取り戻すために政府がやるべきこと、国を挙げてやるべきことは何か? 皆さんはどう思いますか?

 当所の会員である多くの経営者は、それぞれのお客様との信頼を大切に、働く社員とその家族の皆さんのために、自分の店、会社の存続のため毎日悪戦苦闘されています。お困りごとはぜひ当所にご相談下さい。職員と共に全力で事に当たりますことを会頭としてお約束いたします。

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