小田原箱根商工会議所は、小田原・箱根の企業を応援しています。


2022年 12月号

会頭コラム

 先日の定例の会頭記者会見の席で、ある記者の方からこんな質問をいただきました。「低金利時代ですが、今後、金利が上がることは中小企業にとっては好ましくないことでは?」と。
 私は、「今、私たち中小企業の経営は電気料金や原材料価格の暴騰によって、頑張っても利益を出せない状況に追い込まれています。その原因が行き過ぎた円安であり、円安を引き起こしているのが、日米の金利差であることは明らかです。金利の上昇は、借金をしている会社にとってはコスト増になるので、嬉しくないことではありますが、現状を鑑みれば、それより現在のエネルギーを含む原材料コストの上昇が経営に及ぼしているマイナス効果のほうが数段大きい、つまり、電気料金は5割上がり、原材料の2割とか3割とか上がっていますが、金利は20~30%になるということはありませんし、絶対金額で比べれば、その影響の差は明らかです。」と答えました。
 
 「大胆な金融政策(金融緩和)」で、「金利を抑えれば、将来的なお金の価値が下がるから、国民の間に『下がる前に使ってしまおう』という意思が働き、消費が活発化し、景気がよくなり、賃金も上がるはず」と国の財政担当者に言われても、現実の暮らしでは、消費者は今使えるお金がない、将来が不安なので使えないというのが実態でしょう。
 
 「機動的な財政出動」で、いくらお金を刷ってばらまいても、そのお金は一部の企業や団体・個人に集中し、内部留保、貯蓄として貯えられ、あるいは、化石燃料の輸入代金等で海外に漏れ出してしまい、一向に地域、地域の中小企業、そしてお金が必要な人の手に渡らない、つまりお金が廻っていないというのが実態でしょう。
 
 日銀が金利を上げられない理由は別にあり、上げると日銀自体が債務超過(一般企業とは財務諸表の形が異なりますが)になりかねないという状況で、実は打つ手がないというのが本音ではないのかと勘繰りたくなります。
 
 企業が借り入れを増やし、設備投資等の新規投資が増えることを期待して金利を抑えるのではなく、まともな金利を負担してもきちんと経営が成り立つ環境をつくることを今、この国は目指すべきで、国の政策はそこにあるべきではないでしょうか。ガソリンや電力のようにコストの上昇を小手先の補助でかわそうとするだけでなく、まっとうな努力をすれば経営が成り立つような健全な経済環境を再構築することに力を注いで欲しいものです。病巣を観ることなく傷口にあとからあとからバンドエイドを貼るような対処療法に終始するだけでなく、痛みを伴っても、抜本的な治療とリハビリすべきでしょう。政治家は痛みやリスクを伴っても勇気を以て主張して欲しいものです。
 
 私たち商工会議所は地域の中小企業の集まりであり、国の政策に直接に影響を与えることは難しいかも知れません。が、引き続き地域で廻るお金を増やしその廻るスピードを上げることに資する取り組みや行政への提案、提言の発信によりいっそう注力してまいります。
 今年最後のコラムは中小企業の経営を取り巻く諸状況が好転する兆しが全く見えないフラストレーションを感じながらのものになってしまいました。
 
 

入会のご案内

意見・要望活動

意見・要望活動

ページの先頭へ