小田原箱根商工会議所は、小田原・箱根の企業を応援しています。


2023年 8月号

事業承継とは地域の宝物を守ること

 地域の中小企業を巡る課題はたくさんありますが、跡継ぎ問題も深刻です。
 残念ながら様々な理由で当所を退会される方がいらっしゃいます。その中で圧倒的に多いのが「廃業」です。「廃業」であって「倒産」ではありません。つまり、自身も高齢になり後継者もいないし、今なら周りにあまり迷惑もかけず、自分の生活のためにもいくばくかは残せるので、という経営者の方が多いのです。黒字で廃業するケースも多いようです。
 商品やサービスも確立し、ブランド認知もあり、お客様がついている商売がなくなることは、もったいないと思いますし、地域経済全体にとっては損失です。
 
 一方、当所では創業支援策として創業塾を始めて9年目になります。毎年、自分で商売を興したいと願う多くの人が集まり、学んでいます。今年も「おだわら起業スクール」という名称で5~7月、全6回に亘り開催され、先日40名が卒業しました。先日、ARUYO ODAWARAを会場に開催した最終回のビジネスプランの発表会ではそれぞれに熱のこもったプレゼンを聴くことができました。コロナを経て、ますます起業を考えている方が増えていると実感します。それも女性が多いです。とても心強い限りです。当所としても継続的にサポートしてまいります。
 
 さて、一方、商売を手じまいしたい人がいて、一方、この地で新しく商売にチャレンジしたい人がいて・・・ならば、両者のマッチングができないかと思い立ち、小田原箱根事業承継マッチングプラットフォーム事業「襷をつなぐ」を立ち上げたのが、5年前でした。情報が集まりやすい金融機関(日本政策金融公庫、さがみ信用金庫、横浜銀行)、東京地方税理士会小田原支部、そして当所がスクラムを組んでスタートしましたが、なかなか成約しないのが実情でした。承継する人・企業はだれでもいいというわけにはいきません。この地でしっかりと根を下ろしてくれる方に引き継いでもらいたいという意図で、あくまで廃業、起業の情報は関係者間だけのクローズの形で扱っていますので、母集団が少ないこと、ミスマッチになってしまうことがその原因です。

 「襷をつなぐ」の大きな枠組みの中で、その足りないところを補うための新たな取り組みをご紹介します。採用したのは、「(株)ライトライト」(宮崎県宮崎市)が展開する「relay」という事業承継の仕組みです。*「relay」は、"事業主"と"継業してくれる人"をつなぐ事業承継マッチングプラットフォーム。

 事業を引き継ぎたい事業主の記事を掲載し、それを見た継業候補者とマッチングします。
 跡継ぎを探している方(いわば売り手)がそのことをオープンにしてもよいという判断をされることが大前提ですが、relayのWEBサイトに(記事風の読み物として)公表します。全国からそれを見て興味を持った方々(買い手)とまずはネットで連絡を取り合い、よければ実際に会ってみてお互いに気脈が通じれば、そこで初めて守秘義務契約を交わし、次の段階へという仕組みです。売り手には費用負担がないということも特長のひとつです。

 いわゆる企業のM&Aは手間暇がかかり、ある一定以上の規模の案件でないと採算がとりにくいということで、M&A会社や金融機関は地域の小さな案件には手を出さないというのが実情で、今回は当所の会員さんの大部分を占める小規模な事業者さんのための取り組みです。また、一昔前には廃業や跡継ぎを探しているということを、恥ずかしい、あるいは取引先から商売を切られることが心配と、他人に知られたくないという方が多かったですが、M&Aが通常のビジネス手法として一般化する中で、そのあたりの抵抗感も徐々に薄まっているようです。

 先日、relay社の齋藤隆太社長にお会いしてじっくりとお話をしました。若い社長さんですが、すでにわが国でのクラウドファデイングの先駆けとしての実績もあり、持続可能な地域の中で中小企業の果たすべき役割を認識され、地域経済を持続可能にするためのひとつの方策をして熟考さえた末に実装されていることに、同感し大いに感銘を受けました。
 
8月末までにはWEBサイトに当所のページがアップされる予定です。ぜひ、ご興味を持っていただけたらと思いますし、もしお近くで後継者を探している経営者の方がいらしたら、ぜひ、ご紹介ください。
小田原箱根のお店や工場やサービスはこの地の宝物です。元気でやる気のある方に引き継いでいただくことは地域経済全体にとっても重要なことだと思うのです。

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