小田原箱根商工会議所は、小田原・箱根の企業を応援しています。


2023年 12月号

理想と現実

 夏の酷暑が嘘のように、秋を感じる間もなく一気に冬の到来です。食べ物、ファッション、芸術といった秋の風情を楽しむ暇もありませんでした。こんな調子で私たち日本人にとっての楽しみである四季もなくなっていってしまうのでしょうか? 豊かな四季にまつわる需要=市場も小さくなってしまいそうです。加えて、原材料である農水産物の収穫にも変化をもたらしています。まさに気候変動は、私たちのビジネスへも大きな影響を与え始めました。さらには自然災害を誘発し、いのちに直結する問題になってきています。
 気候変動は地球の裏側の話でもなく、グローバル企業だけが心配すればいい話でもなく、私たち中小企業にとっても極めて「現実的」な問題なのですが、私たちはもうひとつの「現実的」な問題、例えば、円安によるコスト高、資金繰り、人手不足などへの対応に忙殺され、気候変動への対応が二の次になっているというのが現状でしょう。
 
 さて、COP28(気候変動枠組み条約第28回締約国会議 11月30日~12月12日 アラブ首長国連邦・ドバイ)での議論に逆行するように、最近のこの国の政府やエネルギー業界からの発信では化石燃料や原発から再生可能エネルギーに急に移行することは「現実的ではない」という意見が目立ちます。しかし、よく考えてみたいと思います。言うまでもなく気候変動への対応は待ったなしですし、化石燃料の輸入代金は海外へ漏れ出し、原発のような中央集権的なエネルギーは地域からお金を吸い上げ、不安定な国際情勢の左右されるエネルギーは経営コストを押し上げ・・・と中小企業を巡る経営環境にとっては極めて「現実的」な問題になっています。さらには、未解決の原発の使用済み核燃料の問題は極めて「現実的」な問題です。この国エネルギー政策の舵を大きく切ることなく、いわゆる「現実的」な対処方法(例えば、価格高騰への一時的な補助金)に拘泥していることこそ、「非現実的」なことなのではと思います。
 
 これから政府はGX(Green Transformation・グリーントランスフォーメーション)で150兆円の官民投資を目指し、その呼び水として20兆円を拠出すると言っています。新しい技術開発を進めることを否定するものではありませんが、同時に今あるすぐに使える技術を最大限に活用し、確実な効果、成果を上げることを優先させ、そこにも資金を投入すべきだと思います。先月のこのコラムで書いたように、今ある技術でできる省エネ策(例えば、建物の断熱等)はたくさんあります。当所では、あらゆる業種、業態についての省エネ診断からの改善の実装までのお手伝いの体制を完備して、会員さんの利用を待っています。ぜひ、お声がけください。
 
 「理想を掲げ、現実的な手段・方法で確実に理想に近づく」道を選ぶのか?「理想的な手段・方法を模索して、結局、現状から抜け出せない」道を選ぶのか? 果たして、どちらが現実的で成果につながる堅実なアプローチなのでしょう? 国のエネルギー政策を観ていると感じます。これまでと今に縛られることなく、現実を上から下から横から斜めからと多面的に観ていくことが必要で、その姿勢こそ「現実的」なのではないでしょうか? 
 

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