小田原箱根商工会議所は、小田原・箱根の企業を応援しています。


2024年  2月号

天災は忘れた頃にやってくる

 新年のご挨拶を晴れ晴れと声高にすることが憚れる年明けになってしまいました。能登地震でお亡くなりになった方にはお悔やみを、被災された方にはお見舞いを申し上げます。商工会議所のネットワークを活かし、できる支援は迅速に進めてまいります。一方、被災をしていない私たちがいたずらに暗い顔をして自粛ムードに入っても何の助けにもならないと思います。被災地に想いを向けつつ、しかるべき時にしかるべき方法でさらなる支援できるように経済を廻していくことも肝要かと思います。
 
 さて、表題の言葉は、明治、大正、昭和を生きた物理学者で随筆家であった寺田寅彦が残したとされています。今は前の天災を忘れる前に天災が次から次へと起こる状況です。「天災は忘れる前にやってくる」時代になってしまいました。しかし、寺田伯の言葉の本質は備えの大切さを説いていることだと思います。そう思うと私たちは未だに天災から学び備えをしっかりとするということはまだまだできていないと感じます。
 
 防災対策については、当所もこれまでも取り組んできましたが、取り組みが生ぬるかったと感じています。
 防災は3つの柱で進めていくことが肝要だと思います。(地震と津波、豪雨のような異常気象に加えて、富士山の噴火も心配です)
 

1.個社のBCP
 BCP(business continuity planning)とは事業継続計画、つまり災害などの緊急事態が発生したときに、企業/店が損害を最小限に抑え、事業の継続や復旧を図るための計画のことです。まずは自分の会社/店は自分で守るということが原則です。万が一を想定してどういう備え/準備をすべきか?、万が一が起きたらどういう行動をとるか?(特に外からの支援が入るまでの初動の3日間が重要と言われています)落ち着いたら復旧、復興、つまり、事業の再開をどう進めるか? それらはそれぞれの会社が自分で対処すべきことです。
 これまで当所の防災委員会が勉強会や会員向けの講演会を開催し啓発に努めてきました。個社のBCPの業種別、会社の規模別のモデルを提示しながら、それぞれの対応を促してきました。今後は、さらに各社が実際に計画を作って、その計画に従って訓練をしているかを
おせっかいと言われても確認させてもらおうと思います。
 
2.地域内連携

 2021年には小田原市自治会総連合と小田原市と当所で包括的な地域防災協定を締結しました。これまでの行政の地域防災は、自治会頼りでした。休日はともかく、平日の昼間は住民があまり居ない地区が多い中、実効性のある防災体制の再構築のためには、その自治会の区域内で仕事をしている私たちの会員企業さんが加わっていかないとならないという認識に立って、市全体での包括協定を受けて、自治会あるいは地区の自治会連合、その地区にある会員企業、行政の3者で協議、協力して、何かあったらどうするという計画を策定し、訓練も一緒に実施するということを進めてきています。どういう人が住んでいて、どんな状況は予想されるのか? どういう事業所(工場、スーパーマーケットなどの業種で)があり、どんな支援ができるのかは、地区ごとにはその様相は異なります。ので、その地域の構成員が行政を仲立ちに協力していくことが重要です。この地区ごとの動きはまだ、ほんの一部に留まっています。スピードを上げて、この地域全域をその体制で塗り潰していく必要があります。
 
3.広域連携
 東日本大震災の時も今回の能登震災でも、現地の状況が分からず、どこをどう支援したら
いいか分からないという状況に毎回直面します。ですから、平時のうちに全国1700余の市町が支援をする/される地域を決めておいたらいいのではと思うのです。ボランテイアに関しては、神戸淡路震災以降、全国的な組織が立ち上がり、体制整備が進んでいると聴いています。物資の支援は被災地周辺からが効率がいいでしょう。問題は避難民の受け入れです。  
 東日本大震災の時には、箱根の宿泊施設と行政に協力いただいて被災地からの避難民700人を短期受け入れる体制を作りました。が、しかし、現実にはほんの数十名が来ただけでした。今思えば、確かに明日をも分からない極限の精神状態におかれた人がだれも知らない、行ったこともないところへ逃げるかと言えば、それは難しいと言わざるを得ないと。もし、「小田原の誰々とは仕事を通じてよく知っている」とか「箱根の誰々とは家族ぐるみでお付き合いがある」といった状況があったなら、また結果は異なったのではないかと。その時の教訓は、いくらしくみを作っても、そこに人間同士の顔の見える関係がないとそのしくみは機能しないということでした。
 そこで考えたのが、「仮称)ともだちのまちネットワーク」です。平素から、例えば小田原ならこことここというように2つ程度のまちと、何かあったらお互いに助け合おうという約束をし、準備をし、そして、大切なことは住民や事業者どおしで交流をして顔に見える関係を作っておくということです。親子でホームステイでの臨海学校、林間学校で交流することもいいかと思います。事業者同士でもできることがありそうです。事前に相手を決めて
おけば、お互いの状況(家族構成、年齢などの住民の情報など)が分かり、どういう準備や体制が必要かが事前に分かります。

 このしくみを日本全国の市町に張り巡らせることができたら、この国は災害に強いレジエント(しなやかで強靱)な国になるのではないでしょうか。何も起こらなかったら、それはラッキーで友達が増えたということでハッピーではないでしょうか。当所では、二宮尊徳翁つながりで仲のいい栃木・日光と静岡・掛川の商工会議所と共にそんな関係構築の検討を開始しました。
 
 天災を忘れないうちにできること、やるべきことは山積みです。スピードを上げて取り組んでまいります。

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