2024年 9月号
たまには外から観ることも・・・
8月にアメリカの西海岸へ行ってきました。カリフォルニア州ロスアンジェルス、チュラビスタ、そしてメキシコのシナロア州マサトランと巡ってきました。ビジネス半分で、あとの半分は私が40数年前に10年間ほど働き暮らし、あるいは何度も仕事で通ったまちを訪れ、お世話になった方々との旧交を温め情報交換をしたりと懐かしさに浸る旅でした。
全般に活況を呈しているという印象でした。ロスアンジェルスでは相変わらずフリーウエイは車でいっぱいですし、高級なレストランやホテルは賑わっています。特に日本人(特に日本からの)の影が薄れている印象の中で中国人の活躍が目立つように感じました。環境や脱炭素に先進的だと思われているカリフォルニア州では「2035年までにガソリン車の新車販売を廃止する」という方針を打ち出しています。販売台数のうちクリーンビークル(電気自動車、プラグインハイブリッド車、燃料電池車)の比率(2021年末現在)は全米7.5%でカリフォルニア州は38.7%と群を抜いています。(2位はフロリダ6.6% 3位はテキサス5.6%)(参考JETRO)ちなみに日本では0.9%(2021)です。しかし、ロスアンジェルスでは前回訪問した一年半前には非ガソリン車がずいぶん多いと感じましたが、今回はその時と比べてあまり増えた印象がありませんでした。ガソリン車はあまり減っていず、クリーンビークルの中ではEVよりハイブリッドが増えている印象でした。「Drill Baby Drill!(化石燃料をもっと掘れ!)」と叫んでいる人が再選されかねない11月の大統領選挙の趨勢を待って様子見をしている人が多いのかどうか分かりませんが。
小田原市と1981年以来の姉妹都市であるチュラビスタでは、市長さんとお会いして、私が会長を務めている小田原市民海外交流会が主催する青年交流事業(毎年小田原から4名、チュラビスタから4名の若者の短期留学)がコロナで中断していますので、その再開をお願いしてきました。チュラビスタでは大規模なコンベンションと1600室のホテルの再開発の現場も視察してきました。1980年頃には約8万人だった人口は今や28万人に近づき、この40年間で3~4倍に、これからも増えるだろうとは市長のお話でした。
メキシコのマサトランはロスから飛行機で2時間半ほど南に下った人口50万のシナロア州の中心的都市で、港があるので18世紀にはスペイン人による貿易で、その後はエビの産地として漁業で栄え、最近は長い海岸線を活かし、高層マンションとホテルの建設ブームが続き、リゾート地として人口も50万に増え、活気があります。電力は火力発電に頼り、まちでは全くといっていいほどEVは見当たらなかったです。脱炭素は二の次という印象でした。
今回、彼の地でのSDGsとか脱炭素への関心の程度を探ろうと様々な経営者、会計士、弁護士などビジネスマンに訊いてみましたが、全く関心がない、SDGs自体を知らないという人も結構存在することにびっくりしました。一方、意識高く危機感を持って、例えば、自分の車をEVに切り替えたり、自社で太陽光発電を採用している人も多いとも感じました。まちに出てみれば、レストランやカフェではベジタリアンやビーガンを謳うメニューは当たり前のようにありますが、一方、某大手のコーヒーチェーン店ではプラスチックのカップやストローを使っていますし、スーパーに行けばプラスチックボトルの水やジュースが大量に並んでいますし、テークアウトの容器もプラスチックが使われています。紙とプラスチックの比較において、環境的、資源的にプラスチックが優れているという判断なのかどうかは調べてみたいと思います。ということで、今回の印象は日本でもそうかも知れませんが、世界的に見ても、脱炭素への意識と取り組みは、濃淡(というより白黒)のまだら模様であるというのが実態なのではと感じました。とすれば、気づき行動し始めた人が、さらに行動と発信を強化し、その動きを横に広げていき、まだら模様を全体的なグラデーションにしていく地道な努力しかないと思います。
そして、一番感じたことは社会の分断と格差の広がりです。ロスアンジェルスでは日の当たるところは活況を呈し明るい笑顔が溢れている一方、ホームレスは増え、私の工場があった下町あたりでは昼間でも歩けない危険なエリアが広がっています。
ビジネスの世界では私たち中小企業も、好む好まざるに拘わらず世界がつながっている、いわゆるバリューチェーンの中に組み込まれている現実の中で、大統領選挙が目前のアメリカをはじめ、海外の動きに関心を持つことは必要だと改めて思いました。
徒然なるままの長文にお付き合いくださりありがとうございます。