2024年 10月号
政治と政局 あるいは、フォアキャストと
バックキャストの話
商工会議所としては特定の政治団体や政治家を支援したりすることはしてはならないという建前になっていますが、政治に関して議論することを妨げるものでないと思いますので、感じるままに一言。
与野党ともリーダーが変わり、衆議院解散、選挙と政局が動いています。これまでの過程で残念だと感じているのは、裏金、賃金、デジタル化、国防など目の前の喫緊のかつ山積する課題については語られていますが、目線を上げて中長期的に取り組むべき課題、例えば、気候変動についてはほとんど全くと言っていいほど争点になっていない(各候補とも敢えてしないというべきかも)ことです。票にならないと判断されたのかも知れません。メデイアも政局、つまり、党内の権力争いや与野党の駆け引きなどについては取り上げますが、本当の意味の政治が語られることが少ないと感じています。多くのメデイアは、有権者である読者は政治より政局に関心があると思っているのでしょう。
この国のリーダーからどういう国を目指すのかという大局的な議論が聞けないことは残念ですし、心配です。依然としてフォアキャストの議論に終始しているように感じます。果たして過去から現在の延長線上に私たちが望む未来はあるのでしょうか? 今こそバックキャストでの議論が必要なはずなのに。
私たち中小企業の経営者も同じような状況に陥りがちだと思います。「今日はバイトは来てくれるのか?」「月末の資金繰りは大丈夫か?」などなど目の前には即対応しなくてはならない課題が迫ってきます。それらの対応に忙殺されてしまい、中長期的なことを考え準備をすることがなかなかできないというのが実態ではないでしょうか。もちろん、目の前の課題から目をそらせず迅速、果敢に対応していくことは必須でありますが、同時に少し目線を上げて、地域のこと、世界のことにもアンテナを張りつつ、将来に向けての自社・自店のなりたい姿を思い描いていくことも大切だと思います。「そんな余裕はないよ!」とか、「そんな青臭いこと!」と思われるかも知れませんが。
当所は会員企業の皆さんの目の前の課題解決のお手伝いと共に、目線を上げることの機会の提供にも注力してまいります。気候変動しかり、不安定な国際情勢しかり、国内の政治しかり、私たち地域の中小企業の日々の経営に直接的に影響を与える要素が増大、かつ複雑化していくからこそ、敢えてバックキャストの目線も大切だと思うからです。