2025年 7月号
「これからの成長産業」
久しぶりに再会した私の大学の後輩から興味深い仕事の話を聴きました。彼は宇宙ゴミの回収・処理をビジネスとする「アストロスケール」(https://astroscale.com)という会社の立ち上げにCFO(財務担当役員)として関わり、2013年に3人からスタートした会社は、現在では世界5カ国の拠点を持つほどに成長しているそうです。
宇宙ゴミとは役割が終わった人工衛星とその破片のことで、これまで宇宙に打ち上げられたロケットや衛星は1万機以上で、その数は増える一方です。すでに、役目を終えたり、故障した人工衛星やその部品・破片が宇宙監視ネットワークによって追跡されている破片は約3万個、さらには追跡されていない小型のもので直径10cm以上で5万個以上、1cm以上のものは120万個以上、1mm以上のもの含めると3億個も宇宙空間を飛び回っているのだそうです。その会社の仕事は、それらの宇宙ゴミを誘導して大気圏に突入させ、炎上消滅させることなのだそうです。ゴミ化するのを防ぐために、あらかじめ軌道離脱用のエンジンやその他の機構を搭載し、運用終了後には大気圏へ再突入させることで、軌道上に不要な物体を残さないようにしているのだそうですが、それでもなお宇宙ゴミの総量は増加し続けているのだそうです。それが何が問題かというと、既存のゴミ同士やゴミと人工衛星の衝突による破片の増加が進み、一部の軌道を利用できなくなり、広く社会生活と経済活動に大きな悪影響を及ぼす危険性がある。たとえば 、GPSの位置情報サービスが停止すれば、車のナビや船舶の運航に支障が生じる。天気予報や災害対策などにも深刻な影響が及ぶ可能性もある。時刻同期の基準としても使用されているため、金融機関の株式・債券・為替取引や銀行間決済などでエラーや遅延、業務停止のリスクが高まるのだそうです。
便利さを追求して、新しい科学技術を開発し実社会に導入していく裏側で、負の資産を増やしてしまうということはありがちです。ひとつの例として、原発の使用済み核燃料のことを思い出しました。今後10万年にわたり、管理し続ける(実際には不可能でしょう)必要のある使用済み核燃料のことを放置したまま原発に回帰しようとしているこの国のエネルギー政策には大きな疑問を持たざるを得ません。
さて、私たち企業経営者は、消費者のニーズを掘り起こすマーケテイングという名の下に、より豊かで便利で刺激的で楽しい暮らしを実現するため、頭脳と資金を投入し、新しい技術を開発し、新しい商品やサービスを提供する努力を続けてきました。いわば、地球の自然資産あるいは自然資本を使い放題使うといういわば「動脈産業」が経済成長を牽引してきました。その裏側で人知れず(人に分からないように、あるいは、人に知られないように)山積する廃棄物や未利用資源は放置してきました。
これからの時代はヒトの欲望を喚起する「動脈産業」に加えて、社会の課題解決、大きく言えば、自然を利用するだけから、自然をあるべき姿に戻すことに方向を転換することに潜在的なビジネスのチャンスがあるのではないかと思います。これまで負の資産として放置してきたものを資源として捉え、どうそれらに新たな価値を付加してビジネスとしてお金を廻していくか、事業化するか、いわば「静脈産業」が必要であり、それらが成長産業になると思います。そのために自社のヒト・モノ・カネ・情報という経営資源を何にどう振り分けるか? その答えは簡単ではなく、相当の覚悟と知恵が必要だと思いますが。
梅雨明け宣言もないうちからのこの酷暑の中で、その原因は何か? 持続可能とは? それに対してビジネスができることは? と暑さにボーとしながらも問い続けなければと思うこの頃です。